2019 November 19 S街

2019 November 19 S街

2019 November 19 S街

見事な自然を残している公園も、
いつもなら紅葉の始まっている木々もあるのだが、
見当たらない。
台風と激しい雨で荒れ果てていた。
地球の気温が上昇していることを現している現象が、
あちこちに見られる。
近くの路地にも、
熱帯植物だと思われる紫色の草が繁茂していた。

2019 October 28 Y街

2019 October 28 Y街

2019 October 28 Y街

影が長くなってきた。
薔薇園の花達も少しづつ葉を落とし始めている。
低くなった太陽は、
木々に隠れた庭園の奥まで差し込んで、
ひっそりと閉じたドアにまで忍び込んでいる。

2019 September 24 M街

2019 September 24 M街

2019 September 24 M街

一気に気温が下がってきている。
陽射しは衰えていず、硬く靭い。
ドラキュラが眼を醒ます、鉛色の空に覆われるのには
まだ時間がありそうだ。

2018 August 28 Y街

2019 August 28 Y街

2019 August 28 Y街

太陽が水平線近くに落ちてくると、
オレンジとパープルの混じり合った光が一面に漂い始め、
シグナルは赤く点灯したままで警告を発し続け、
閉じられていた扉が静かに開く音があちこちでし、
迷宮への入り口がぽっかりと黒い口を開ける。

2019 August 28 Y街

太陽が水平線近くに落ちてくると、
オレンジとパープルの混じり合った光が一面に漂い始め、
シグナルは赤く点灯したままで警告を発し続け、
閉じられていた扉が静かに開く音があちこちでし、
迷宮への入り口がぽっかりと黒い口を開ける。

2019 July 20 T街

2019 July 20 T街

2019 July 20 T街

中国料理の店、チェーン店、風俗店などが、
それぞれのテリトリーを死守するような形ではなく、
何か投げやりな形で、
それらの店が雑然と混在している。
たくさんの人たちが行き交い、
賑わっているのだが、
奇妙な倦怠感が漂い、
無国籍な感じを受けるのは、
ここが都内有数の中華街になろうとしていることに、
関係しているのかもしれない。

2019 June 29 S町

2019 June 29 S町

2019 June 29 S町

道路沿いでコーヒーを飲んだりするのが、
当たり前のような風景になり、
公園で裸になって日光浴をするのも、
どうやら普通の出来事になったようだ。

2019 May 30 Y街

2019 May 30 Y街

2019 May 30 Y街

電車が走り、
幹線道路が貫通する街にこんな風景の瞬間がある。
喧騒も消え去り、
空気の匂いさえも違っているかのようだ。
数日後に訪れてみると、
花の姿は変わり、
当然、陽のあたりかたも強さも違う。
夢のような風景は消滅していた。

2018 25 August Y街

2019 April 6 O街

2019 April 6 O街

2019 April 6 O街

4月は、
寒気と暖気がせめぎ合い、
木々を戸惑わせる。
すでに、
もう桜が散り始めているのに、
頑なに衣替えを拒んでいる風景の横では、
柳が芽吹き嫋やかに揺れていたりするのだ。

2019 March 26 Y街

2019 March 26 Y街

2019 March 26 Y街

花が咲き始める頃、
すでに日差しは柔らかくなっているが、
その底にはまだ鋭い刃が潜んでいる。
そんな空気を写しとりたいと思ってシャッターを切るのだが、
旺盛な花の命に負けてしまう。

2019 February 26 G街

2019 February 26 G街

2019 February 26 G街

よく知っている街が急に姿を変え、
見たことのない街に見える瞬間がある。
人の動き方なのか、
太陽の位置なのか、
頭の中の回転軸がかわったためなのかわからない。
しかし、
確かに言えることは、
その幻想の街の手触りの方が、
現実の街のそれよりも現実味を帯び、
濃厚だということだ。

2019 January 19 Z街

2019 January 19 Z街

2019 January 19 Z街

枯野を歩くと、
乾ききった草や落ちた小枝が粉々に砕ける。
生き物たちはひっそりと地中に身を潜め、
冬という禁欲的な季節は、
食欲も減退させるのか、
蜘蛛はいつ来るとも知れぬ獲物を待っている。

2018 December 20 K街

2018 December 20 K街

2018 December 20 K街

スコットランドの南西部にアラン島がある。
たった一つある蒸留所では、
アランモルトというシングルモルトのウイスキーだけを作っている。
57.1%という強い酒だが、
口に含むと、滑らかに喉の底へと転がってゆく。
飲み干したグラスを嗅ぐと、
蜂蜜のような甘い香りと、
草の匂いがした。
街の匂いは、
日が傾きかけると急に濃くなってくる。

2018 October 25 G街

2018 October 25 G街

2018 October 25 G街

記憶を頼りに歩いていると、
いつの間にか元の場所に戻っている時がある。
検索すればたちどころに地図が表記され、
たちまち目的地に着くのだが、
そうやって着いた目的地はなぜか色褪せている。
再び記憶を呼び覚まし歩き始めると、
数十年前によく行った店が突然現れる。
たちどころに脳内の地図は編集し直され、
新しい地図が表示される。

2018 September 18 G街

2018 September 18 G街

2018 September 18 G街

2020が掛け声のように街が沸騰している。
馴染みのビルが消滅し、
歩き慣れたれた道が突然迷路に変わる。
アートの拠点となっていた、
美しい佇まいの建物も数多く消滅した。
再開発の名の下に街は、
仮面を被ったように同じ顔になってゆく。

2018 22 August R街

2018 22 August R街

2018 22 August R街

再開発の名の下に、
日本中がのっぺらぼうな一つの顔になろうとしている。
駅を降りて改札を抜けると、
そこは地上から2階か3階高くなっているらしく、
何方向へかデッキが伸びていて、
街が見下ろせるようになっている。
どこへ行っても駅前の風景はこんな様子だ。
町工場の密集するあたりで見つけたこんな風景も、
消滅するのは時間の問題だろう。

2018 June 15 Y街

2018 June 15 Y街

2018 June 15 Y街

夜は見慣れた街を異境に変える。
犬も連れないで辺りを見回しながら、
立ち止まったり同じ道を引き返したりと歩いている私は、
異境から湧き出た不審者の一人となっている。

2018 May 8 T街

2018 May 8 T街

2018 May 8 T街

深い森の中ではない。
玄関を出てから数分の場所だ。
幹線の道路脇だ。
急な崖になっているので開発ができずに昔のままの姿で残っている。
あたりは瀟洒な家々が立ち並ぶ、
何処にでもある新興住宅の風景だが、
このあたりが、
鬱蒼と巨木の生い茂る山の中だったということを知らせてくれる。

2018 July 20 G街

2018 July 20 G街

2018 July 20 G街

時計の針に小さな羽が生えて飛び去ってから、
街は、
少女一人になった。
少女は、
同じ軌跡をえがいて音もなく跳ね返ってくる
テニスボールを永遠に打ち返している。
割れたガラスに映るバスは無人のまま動かない。
駅へ戻ろうとするとすると、
今来た道が揺らぎ、
陽炎のようになって消えかかっていた。
真夏の正午は人を幻覚に誘う。

2018 April 23 K街

2018 April 23 K街

2018 April 23 K街

どこを歩いても工事中のビルや、
取り壊され更地になった場所に出会う。
近未来の風景が次々と生まれ、
時代を語るビルは次々と消えて行った。
スクラッチタイルを張り巡らした、
手動式のエレベータのあるビルのオーナーは、
どうやらこのビルを残すことを決意したようだ。

2018 March 29 T町

2018 March 29 T町

2018 March 29 T町

雑草が伸び放題になっていた公園が、
或る日突然フェンスで囲われ、
遊具が取り去られ更地になった。
やがて工事が始まり、
真新しい遊具が設置され、
ざらっとした砂のように見える舗装が施され、
土の無い公園に変わった。
雑草だらけの空き地で、
泥だらけになって遊んだ世代にとっては、
違和感を感じるけれど、
小さい時から、
舗装された地面がほとんどという世界に育った子供たちには、
土が無いということなど、
全く気にならないのだろう。

2018 February 25 K町

2018 February 25 K町

2018 February 25 K町

街が速度を上げて変わり始めている。
多くの、時代の匂いをまとったビルが、
街の記憶とともに消えていった。
2020年から始まる新しい記憶のために。
多くの商業施設もリニューアルに余念がない。
新しい空間が生まれている。
その空間は街の記憶として残るほど、
長い時間存在し続けるのだろうか。

2018 January 27 K町

2018 January 27 K町

2018 January 27 K町

目的もなく歩いていると、
いつのまにか町に歩かされているような気持ちになって、
路地から路地へと連れ回され、
思いもかけないような光景に出会う。
どうやら町は、
目的を持って歩き回られるのが嫌いなようだ。

2017 December 27 S町

2017 December 27 S町

2017 December 27 S町

毎日決まった時間に電車は人で充満する。
行先の決まっている人、
行先のあてのない人を乗せ、
ダイヤどうりに正確に発車して行く。
しばしば事故の情報(その多くは人身事故だ)
が電光掲示板に流れ騒めきはあるが、
何事もなかったように、
再び正しいダイヤに調整しつつ発車してゆく。
一瞬でホームは無人になる。

2017 November 22 K町

2017 November 22 K町

2017 November 22 K町

温室の中では、
遠い旅をしてきた植物たちが、
まどろみながら螺旋状に成長し続けている。
外界から隔絶され、
生暖かい空気の中で花粉や胞子が飛び交う、
閉鎖空間である熱帯植物園のドームでは、
尾崎翠の「第7官界彷徨」の中の苔たちと同じように、
成長する過程の中で植物同士も恋をし、
未知の言葉で語り合っているのかもしれない。

2017 October 15 S町

2017 October 15 S町

2017 October 15 S町

長い時間をかけて形成されてきた森は、
それ自体が巨大な生命体だ。
森の中に足を踏み入れて進んで行くうちに、
体を取り巻いていた空気は、
湿った土や樹々、草花から発散される粒子と一体となって、
その生命体にコントロールされたものへと変わり、
次第に体を侵食し始め、
嗅覚や視覚などの様々な感覚器官にまで変化が及び始める。

2017 September 20 S町

2017 September 20 S町

2017 September 20 S町

気がつくと空が高くなっている。
気がつくと夕暮れが早くなっている。
いつまでも真夏のような暑さが続いていたので、
目の前に秋が来ているのに気がつくのが遅くなっていた。
森の中を歩くとヒヤリとした冷気が体を包み、
確実に季節の訪れを伝えている。
夏の終わりはいつも寂しい。
照りつける太陽が、
いつも漲る生命を感じさせるからなのだろうか。
人類が手にした人工の太陽は死と恐怖しか与えず、
いまだにそれを手なずける事が出来ないままだ。

2017 August 21 K町

2017 August 21 K町

2017 August 21 K町

真昼の太陽は、
アスファルトを眩いほどに発光させ、
その光に負けない夜よりも暗い影を伴って来る。
人工の光は、
夜の暗闇を暴き出し、
隠れているものたちにひっそりと影を焼き付ける。
夜と昼とは逆転する。

2017 June 25 K町

2017 June 25 K町

2017 June 17 K町

まばゆいほどの積乱雲は、
黒雲と激しい雨を伴ってくる。
陽の光が消えひやりとした風が吹き、
風景は一変し雨脚が地面を打つ。
その数分後には、
何事もなかったように再び太陽が顔を出し、
黒々とした影を焼き付ける。夏は光の季節であると同時に、
影の季節でもあるのだ。

2017 May 25 Y町

2017 May 25 Y町

2017 May 25 Y町

長く人が住んでいた家のなかには、
たくさんの記憶が薄い膜の様になり、
何層にも重なり合って部屋の中を埋め尽くしている。
足を踏み入れ進む度に膜が揺れ動き、
記憶の微粒子が幽かな匂いとともにが立ち上り、
やがて、
形をとり始め始める。

2017 April 28 Y町

2017 April 28 Y町

2017 April 28 Y町

家は、
住人が去っても、
そこに住んだ人の気配は残っている。
長い年月を経てきた家であればあるほど、
多くの人の残像が残っていることになる。
しんと静まり返った人気のない部屋が、
窓から差し込む光の角度や、
肌に触れる風の動きが、
残像を生き生きと蘇らせるのか、
家中がざわざわとし始める瞬間がある。

2017March 22 O町

2017 March 22

2017 March 22 O町

町のきらびやかな表皮をめくり、
細い路地に足を踏み入れると、
町は全く違った貌となって存在し始める。
強い陽光が降り注ぎながら、
闇によって支配され、
言葉や文字はその体系を失い、
体温の無い生き物たちが行き交う。

2017 February 20 O町

2017 February 20 O町

2017 February 20 O町

青白い光をスパークさせながら町の中を都電がのろのろと走り、
町は電線で覆われ、
電線のない町などなかった時代から、
少しづつだが電線のない町が増殖中だ。
そんな町を歩くと空は広く広がり、
町並みも少しだけ綺麗になったように感じる。
と同時に町は漂白され、
少しよそよそしくなったようにも感じる。

2016 December 23 K町

2016 December 23 K町

秋元茂 All rights reserved.